背骨の見方

背骨がゆがむと病気になるという話は、よく知られているようです。学校で背骨の検査をして、側弯(そくわん)があるなどと親に知らせますね。でもそれが生かされているでしょうか。側弯があるからこうしなさいと改善方法を示すことで検査が生きてくるはずなのに、側弯だという事実を知らせるだけで、そのまま放置しているのは変だと思いませんか。

背骨って何なの?

rakan
北条の五百羅漢

一口に背骨といいますが、最下端は尾骨、最上端は頚椎1番まであります。必ずしも背中になるのが背骨というわけではありません。中でも特に内臓と関係が深い胸椎(きょうつい)についてお話ししましょう。

首を前に曲げたら後ろに大きくとび出す骨がありますね。これが頸椎(けいつい)7番。一番下の頸椎です。ただし人によっては6番が突き出している場合もあります。その下が胸椎1番で、ここから始まって12番まであります。背中をずっと下にたどっていくと、わき腹のところで肋骨が終わりになる。この線の少し上にあるのが12番です。もっと詳しくいうと、左右の肋骨が終わりになる線のすぐ上が腰椎1番。もう一つ上が胸椎12番です。

背骨と内臓の関係

整体などの勉強をした人、あるいは一般の人でも背骨に関心を持って本を読んだ人は、背骨のひとつひとつについて、この骨はどの内臓器官と関係があると、もっともらしく書いてある表をご覧になったことがあるでしょう。胸椎1番は血圧と関係があるとか、腰椎の3番はねじりと関係があるとか、何番の骨は汗と関係があるとか、詳しく書いてあることが多い。

ところが、こういう一覧表は、どれ一つとして同じものがない。その本によって、書いてあることがばらばらです。胸椎の上のほうは心臓だというものがあったり、肺と関係があるというものがあったりで、どれが正しいのか分からない。こういうものを一生懸命に覚えた人がいるかもしれません。でも別の表が出てきたらどうするの、と尋ねられても答えられないことになります。

中には誰それが言っているのだから正しいと信じている人がいるかもしれませんが、じゃあ彼(彼女)の言ったことだったら何でも信じるのですか? 私は自分で試して結論が出るまで簡単には信じないタイプです。

大ざっぱに覚えておけば十分

難しく複雑なことを覚えるより、だいたいのところを大ざっぱに覚えておくほうが役にたちます。家族や友だちの背骨を判断するときも、だいたいのことが分かれば十分です。私の経験から、大ざっぱなとらえ方を書いておきましょう。

botanika
京都府立植物園で

胸椎は12個ありますから、これを3個ずつ4等分します。そして上から順に、

1. 胸椎1番~3番  心臓
2. 胸椎4番~6番  肺
3. 胸椎7番~9番  消化器(胃・肝臓・すい臓など)
4. 胸椎10番~12番 腎臓

と覚えておきます。これでだいたいのことが分かる。細かいことをごちゃごちゃ覚えてもかえって混乱するだけです。この四つだったら覚えられるでしょう。これで見当をつけます。何番の骨かも正確にわからなくてかまいません。上から4分の1ずつでだいたい見当をつけたら、この辺りが硬いのは腎臓が悪いのか、この辺りが痛いといっているから、この人は胃に問題があるのだろう、というくらいのことは分かります。これでいい。

こういうことがありました。ある人の背中を見ていたら、消化器に関係のあるあたりの骨が歪んでいる。左側だったので胃だろうと推測しました。すこし歪み方がきついように感じたので、胃は大丈夫ですか、と尋ねてみると、少し調子が悪いというお答え。気をつけてくださいね、と申し上げて、それでおしまいにしたのですが、その方があとで心配になったらしく、検査を受けに行かれた。そうしたら胃潰瘍が見つかって入院された、ということがありました。こんな風に内臓の問題が背中に反映していることがよくあります。

背骨が曲がっていると

selfheal
ウツボグサ(セルフヒール)

さて、だいたい胸椎を四等分して、およそのことが分かったところで、今度は背骨の両脇に人差し指をあてて、上下にずらしてみます。首からずっと下がっていってもいいですし、腰から上がっていっても、どちらでもかまいません。見てもらう人は、うつ伏せになって寝る。場合によっては座っていてもいいでしょう。これで、どの骨が左右にとび出しているかを探ります。曲がっている骨は指があたるので、ああここはとび出しているなあとか、この骨はなんだか動きにくいなあとか、あるいは、ここのところは骨がみんなつながったように硬くなっているなあとか、いろんなことがわかります。見てもらっている人は、あ、そこの骨がなんだか痛いとか、そこを触られると気持ちいい、などと言います。

骨が曲がっていたり、痛みがあるところでは、その歪みのために神経や血管が圧迫されている。そのために、関連する内臓が機能低下を起こしている可能性があります。その骨がどの臓器の働きと関係があるかは、よくわからなくても結構です。

そうやって左右に出っ張っている骨があったり、どこか痛みを感じる骨があったりすれば、そこで左右の指を止めて、じっとあてがっているといい。あてているだけで次第に緩んできます。骨の歪みをなおす技術はいろいろありますが、難しいことは別として、とりあえずじっとあてているだけでもそれなりの効果がありますから、だれかにやってもらってください。そうして骨がゆるんでくる感じを味わってください。あなたにとって至福のひとときです。

( 2006. 11 初出 )