> どんな道がよい?_整体の朱鯨亭 奈良市

どんな道がよいか

歩くのがいいといっても、舗装道路の上では限界があります。無理をして舗装道路を歩くと、かえって身体を傷めかねません。

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ツタンカーメンのエンドウ

脚がぱんぱんに

脚、とりわけ、ふくらはぎのカチカチになっている人が実に多いのは、なぜか。これは道のあり方と関わりがあるのではないか、というのが今日のテーマです。

いつも私は歩く効用について書いていますし、お越しになる方にもそう申し上げています。腰に手をあてて歩くと分かりますが、わずかながら骨盤が前後にも左右にも揺れています。歩くことで骨盤の調整をしていることになりますし、腰痛の人が歩いているうちによくなったりします。また「テニス腰」の号に書きましたように、動くことでエネルギーを使うので、たまったエネルギーを発散できるのも事実でしょう。お腹の脂肪がとれて喜ぶ人があるかもしれない。でも、本当に歩くのはからだにいいと言い切れるのでしょうか。疑問があります。

先日、遠くの方むけの整体実習が終りました。整体実習には列島縦断に近い歩きをしたことがあるという男性Oさんが来られていました。歩くのはたいてい国道筋で、一日歩くと脚がぱんぱんに腫れ上がってしまう、というお話しでした。今でもOさんの脚はけっこう硬い。さすれば歩きが身体によいとは申しにくいのではないか。脚が硬いと、胴体も硬くなってしまうからです。なぜOさんの脚は、歩くと硬くなってしまったのでしょう。Oさんに限らず、ふくらはぎ(こむら)がカチカチになっている人が多いのはなぜでしょうか。

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モモイロタンポポ

舗装と地道の違い

すこし前の話しになりますが、今年もまだ早い1月ごろ、久方ぶりに木津川沿いを歩いたことがあります。木津川の堤や河川敷には舗装した歩道(兼/自転車道)があり、その両側は草が生えていたり、土になっていたりします。歩きながら、あれこれ実験したり調べたり考えたりするのが私の癖でして、この時も少し実験してみたんです。

まずは草が生えているところや、土が見えているところを選んで歩いてみます。草の上を歩くのは具合がよろしい。歩く時の響きが足にまで強く届くことがありません。やさしい感じです。土の上もそうですね。草の上ほどではないけれど、やはり歩きやすい。ところが、舗装の上をしばらく歩いてみると、だんだんと疲れてきます。脚が痛くなってきたりする。なぜだろう、と考えてみました。歩く足元を見ながら歩いてみました。

じっくり足元をみつめて気づいたのは、草や土の上を歩いていると、足の角度がわずかですが常に変わっていることです。それに対して舗装の上を歩いていると角度がほとんど変わらない。同じ角度で動いていますから、同じ筋肉ばかりを使うことになります。ところが、わずかながら角度が変わると、使う筋肉も変わります。これが微妙な違いを生んでいるのだろうと感じられます。舗装の上では、歩く時の響きが硬くて強いという点もあるかもしれません。

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エキウム

舗装を考え直すとき

いずれにしても歩く時は地道の上が具合がよろしい。あるいは草の上がよろしい。では地道や草道がその辺にない都会の人間はどうすればいいのか。公園を探すか川の堤防を探すか、どちらかでしょう。でも都市の川は堤防まで完全に舗装されているかもしれませんから、歩けるのは公園だけということになるでしょうか。ウォーキング用の靴には本当にそれで舗装の上を歩き続けても大丈夫な程度に、クッションの具合が工夫されているのかどうか。私が長いあいだ歩く時は、舗装していない道を選びます。そういう場所へ歩きに行きます。途中は舗装の上を歩かないわけには参りませんが。

舗装された道には、もう一つ具合の悪いことがあります。道の中央が、かまぼこ型にやや盛り上がっていることです。歩く人は、道の真ん中を歩くわけに行きませんから、端の方を歩きます。ところが端の方はやや斜めになっていますから、そこをせっせと歩くと、からだを傾けて歩いていることになって、これもからだに不都合をもたらすことになっているに違いない。

舗装という仕組みはクルマを運転する人にとっては好都合でしょうが、歩く人にとっては不都合な仕組みだと言わなければなりません。歩く人のことは考えられていない。アスファルトの上をせっせと走ったりすると、ますます脚を硬くすることになりかねません。歩道を歩いているとクルマの出入り口で歩道がたびたび切り込まれている場所がありますが、考え方を変えてみれば、足の角度が頻繁に変わるのですから、むしろいいかもしれません。

結論として、歩くときは少々ガタつき、というか均一でない所を選んで歩くのがいいということになります。木津川の遊歩道で私は、舗装してあるところでなく、その横の草の生えているところ、あるいは土のあるところを選んで歩きました。いつか、舗装という仕組み自体を考え直す時代が来るだろうと期待しています。

( 2009. 06 初出 )