朝歩きの勧め (続)

朝早く起きだして歩くと、心にもからだにも大きな恵みがやってきます。おだやかな陽を浴びて、草の香りをかぎながらゆっくりと散歩してみませんか。

ゆっくり歩くのを散歩という

今朝はいつもより少し遅く、6時に眼が覚めました。窓から外を見ると、空が晴れ渡っています。すぐに出かけることにしました。

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大和の夜明け

まずは寝床体操をします。1~3番をやったあとで、4番もします。その後、これは5番といえばいいのか、4番の逆といえばいいのか、うつ伏せになって肘で上体をささえ、胸のあたりからからだを持ち上げます。これをやると、腕で上体を支えるコブラの姿勢よりも胸を張ることが出来て、とても気持ちがいい。4番と組にするといいのじゃないかな。うん。これですっきりした。夕べは何だか少し寝苦しくて、すっきり眠った気がしなかったんですけれど、これでさわやかになりました。

作務衣に着がえて外に出てみると、空はきれいに晴れ上がって、雲ひとつない快晴でした。クマゼミの鳴き声がかまびすしい。家のまわりは樹が多いので、夏じゅう蝉しぐれが聞けます。

ゆうべ読んでいたルドルフ・シュタイナーの本には、植物の成長をしっかり観察することがとても大切だと書かれていました。そうすることによって、霊的な新しい能力が育つのだと。しっかりというのは文字通りです。何か一つの植物を見定めて、それを毎日毎日ながめる。どのように変化していくかを見るわけです。成長だけでなく、衰微していく様子も観察する。そうすることによって、植物がどのような発展・変化・衰微をしているのかをつかむ。これは何か一本の草か木を決めて、ぜひやってみたいと思っています。

エネルギーをいただく

家を出てすぐのところにハクモクレンの樹があります。その枝を見上げると、たくさんついている卵形の葉が何ともいえず美しい。微妙な色調でそれぞれに一枚ずつ色合いが違っています。こんな色は写真でも出せないし、絵でも難しいだろう。現実の緑は無限に変化に富んでいます。現実の光だけでなく、こちらの感情もそこに紛れ込んでいるのかもしれませんね。

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オオヤマレンゲ

夜が明けると、生きものの活動がすぐに始まります。まだ寝ているのは人間だけかもしれません。今年はじめてのシオラカトンボがすっと通り過ぎました。金魚池では、いつものとおり、コアカと呼ばれる金魚すくい用のちいさな金魚がいっぱい元気です。その中の一匹の動きをずっと追いかけると、おおよそ直線にそって動いていますね。もっと色んな動きをしているように全体としては見えますけれど、一匹だけを追いかけると、だいたいまっすぐに泳いでいます。こういうところに別のところで育ったのを一匹入れると、村八分にあうんだそうですが、そんな時、どんな動きが見られるのか興味がありますね。

幅50センチほどの農業用水路の中をのぞき込むと、小石みたいなのがごろごろしています。何だろうと思ってよく見ると、どうやらタニシですね、あれは。へえー。タニシがこんなところにたくさんいたのか、と、ちょっとびっくり。水の流れているところには、アメンボが泳いでいます。金魚池の表面にたくさんのアメンボが住んでいるところもあって、そんなところでは、遠くから見ると、朝日がアメンボの動いた波紋に共鳴して、きらきら輝いています。ああ、そんなのを見たことがある、と思い出される人もいらっしゃるでしょう。

畑のそばを通ると、シソ科の植物が何種類か植えてあって、ハッカの香りがしました。イチジクの畑のそばでは、確かにイチジクの香りがしてきます。今日は鼻がよく効くなあ、と自分に感心したりして。金魚池の傍では青臭いような匂いがありますし、匂いというのも、生物の感覚の中でけっこう大切なものなのではないだろうか、と改めて考えてみたりします。

40分間の瞑想

田んぼのイネはもう穂をつけているのがあります。そばによって、イネの様子をしっかり見てみると、一本一本で少しずつやはり個性があります。この個性があるということ。これは考えてみると不思議ですよ。世の中にイネなんて、無数にちかく生えているにちがいない。けれど、どの一本をとってみても、一つとして同じものがない。これはやはり不思議だ。ヒトの顔をみてもそう思います。よく似た顔があるとはいうものの、まったく同じ顔はない。ひとりひとりすべて違っているのは驚異です。これまでにご自分とまったく同じ顔のヒトを見かけたことがありますか。私はありませんね。

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興福寺の夜明け

向こうから私と同年輩くらいの男性がすごい速足で歩いて来ました。挨拶しても無理かなと躊躇していると、向こうから「おはようございます」と挨拶して来られた。あわてて「おはようございます」と返すのですけれど、男性のお顔をみると、まっすぐ前方を向いていて、まったく私には関心がなさそうなんです。ともかくすれちがうヒトには挨拶することにしているのでしょうね、このヒトは。さて、次なるもう一人、イヌをつれた若い男性。こちらは苦虫を噛み潰したという表現がぴったりの表情。イヌの散歩にいっておいで、と奥さんに放り出されたのでしょうね。

さて、家の方に戻ってくると、昨年は虫がたくさんついて葉をほとんど枯らせてしまったカリンの木が、青々と葉をつけているのに気づきました。青々といってもカリンの葉は少し青黒いというか、黒っぽくて赤みを帯びた緑です。これはこれで独自の個性をほこっています。

さて、こんな具合にしてちょうど40分ほどで家に戻ってきました。あるヒトによると、散歩の時間は40分以上がいいそうです。40分ほどは続けて歩かないと、歩いた効果が出ないと書いていました。何の本だったかは忘れましたが、それなりの根拠があるんでしょう。みなさん、時々は朝の散歩に出てみませんか、40分をかけて生きものたちと挨拶しよう。