歩行禅

世の中に呼吸法と呼ばれるものがたくさんありますが、私は歩きながらの呼吸法を提唱してみたい。これなら努力がいらないでしょう。

gilia
ギリア

呼吸を歩行に合わせる

最近は禅にまで凝っているのかと、呆れられるかもしれませんが、そうではありません。特に名前を付けなくてもいいんです。だから「歩く気功」でもいいでしょうし「歩く禅」でもいい。要するに名前にこだわらず、やり方にこだわらず、ただ意識して呼吸をしながら歩こう。

朝夕2度、自宅から朱鯨亭まで30分ほど奈良町(ならまち)の中を歩いて通っています。興福寺の境内も通ります。遠隔地の人に羨ましがられるでしょうが、阿修羅像がおわす建物の横を毎日とおって「世界遺産」を眺めながら通勤していることになります。

歩く時に足の運びに合わせて呼吸をしながら歩いてみればどうなるかと考えたわけです。いろいろやってみると、4歩吸って4歩吐くというリズムが、どうも私には合っているようだ。3とか5とかですと初め右足で吸ったのが次は左足で吸うというように左右交互になってうまく合いません。だから「4」と、偶数にしています。

左右どちらから始めるとか、吐くのが先だ、吸うのが先だ、とうるさい議論は一切考えません。ようするに足の動きに合わせて4歩は吸う。そして次の4歩は吐く。両方とも鼻でやります。吐くのは口がいいとか、言いたい人がいるかもしれませんが、そんなことは気にしません。気持ちよければ、それでいい。ただそれだけです。ですから2歩がいい人は、そうすればいいし、6歩がいい人はそうすればいいでしょう。あるいは吸うのは2歩、吐くのは4歩というやり方もありだと思います。

朝の清々しい空気を歩きながら吸うと、天のエネルギーが頭のてっぺんから入ってくる感じがします。そうしてゆっくりと息を吐くと、身体中の汚れがすっかり出て行く感じがします。エネルギーの充填と汚れの放出がいっぺんに出来てしまいます。

silene
シレネ

エネルギーを取り入れる

これをやり始めてから身体の変化を感じるのは体重を測るときです。休日に野山を歩いてくると体重が増えて、部屋に籠って整体をしていると、体重が減ってくる、という話を以前にも書きました。ところが始めてから、体重があまり減りません。整体でエネルギーを使った分、歩いている時にチャージしているんでしょう。「歩行禅」をしながら歩くと肥えるというのではなく、体重が減らない、エネルギーのチャージがいつもできているという感じなんですね。(減らないのは困るという声が聞こえて来そうですが、皆それほど肥えるのが怖いのは、どうしてなんですか)

ヴィパッサナーの歩く瞑想というのがありますが、私のような怠け者には、ピッタリと来ません。やっている内に疲れてきます。かなり続けないと愉快な境地に到達できないのでしょう、きっと。でもこれだったら続けられます。すぐに快適になるです。

「歩行禅」とか「歩く気功」が癌の予防になるという話しがあります。でもそんな目的では続かない。自分が癌になると決まったわけじゃないですしね。歩いている間に余計なことを考えず、頭の中がクリアーな状態でいられるのが愉しいからやるんです。とはいえ道端に貼ってあるポスターが気になって立ち止まることがあります。通りがかった人の表情がおかしくて気がそれることもあります。それでいいんです。気がつけば、すぐに元のリズムに戻りますから。

こうして歩いて朱鯨亭にたどり着いた時、気分のいい状態で腰を落ち着けることになって、都合がいい。一日が愉快に始められます。歩いているだけで「禅」や「気功」ができてしまうという、三日坊主にぴったりの方法ではありませんか。どうぞお試し下さい。

( 2013. 02 初出 )