整体と化学物質

「化学物質過敏症」と診断された人がいらっしゃいました。「過敏症」というと、生まれつき化学物質に弱いんだ、とでもいうような名前です。まともな人は反応しないけれど、この人だけが過敏だからいけないんだ、と言いたげな名前のつけ方ではありませんか。

過敏症ではなく化学傷害

でも、それは本当じゃありません。人工の化学物質に繰り返しさらされるうちに、ひどい症状が出るようになったわけですから、この方は人工物質過剰社会の被害者です。ですからそれをはっきり打ち出して、「化学傷害」と呼ぶほうが正確でしょう。ちかごろは海外でもchemical injury(化学傷害)と呼んでいる人たちが増えてきているそうです。この名前を付けられた人びとは、いろいろな化学物質の複合作用で大変に苦しい思いをしています。

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大阪市中央区で

例えばスーパーに入ると化粧品や洗剤、防虫剤、毛染め剤などなど、ありあまるほどの化学物質が売られています。こういう商品が置かれているコーナーに行くと、確かにきつい臭いがしますね。その影響で、この方は店内に入った途端に気分が悪くなる。また、このような症状を持っていない人でも新しく開店したスーパーなどに入ると、建材などの化学物質の臭気で不快な思いをしている人も少なくないはずです。私の場合は、特にひどい症状が出ることはありませんが、新築の建物に入るのは気が進みません。最近は建材などにかなり気を使って、化学物質の少ない素材を使った建物も増えているようですね。

化学物質に触れない癒し空間を

ビルの一室に陣取るヒーリング・ルームやマッサージ・ルームなどが増えていますね。そこでは、このあたりの配慮がされているのでしょうか。そうであればいいけれど、そうでなければ、来た人にとってヒーリングどころか、苦しみだけを残すことになってしまいます。室内に電磁波の出る電子機器などがたくさんあったりもします。まことにむずかしい生活環境が、私たちの周りを取り囲んでいるものです。

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禅寺の犬小屋(京都)

せめて癒しの空間にいらっしゃる間だけでも、このような有害物質や有害電磁波の影響ができるだけ少なくなるように配慮したいと思っています。朱鯨亭ではお香を炊くことがありますが、チベットの草や樹木を用いて、現地の女性たちが手作りした自然なかおりのお香を使っています。それでも書物の製本に使う接着剤は避けようがありませんし、電線もなくしてしまうのは難しい。今の生活形態では、化学物質をゼロにするのは不可能かもしれません。

金属にも注意を

もう一つ、身につける金属類にも注意を払いたいものです。何の気なしに気軽にピアスをしていたとしましょう。その人は歯に金属を入れているかもしれません。あるいは指輪をしていたりします。複数の金属を身につけている場合、その間に電位差が生じて、微弱電流が流れます。これが何らかの有害作用をしている可能性が大きい。メガネなども油断がなりません。メタルフレームだと被覆が少しずつはがれて、そこに電流が流れます。

磁気の健康器具なども、どんないたずらをしていないともかぎりませんね。体内の磁場が乱れるでしょうから、ほんとうに健康にいいのかどうか疑問です。また、からだに身につける金属類がアンテナとなって電磁波を拾っている可能性もあるといわれます。もう一つ、体内に金属が蓄積している可能性も否定できません。例えば脳の中に蓄積した水銀。あるいは肝臓などの臓器にいろいろな金属が蓄積している可能性はないのかどうか。はっきりしたデータがあるように思えません。

ただ、装身具の金属類は難しいです。金属類はあまりよくないとストレートに言うと、次から来なくなる人がいました。何かプライドを傷つけられたように感じるんでしょうね。でも指輪をしているだけで、何かの影響がないとも限らないとすれば、いつも身に付けているのは感心できないかもしれません。整体を受けにでかける時は、金属の装身具を外してお出かけください。

( 2006. 10 改訂 )