アキレス腱を伸ばす

アキレス腱(けん)を伸ばすと、とてもいいことがあります。長距離を歩いても脚が痛くなりません。耳寄りな話しではありませんか。

tsuwabuki
ツワブキ

骨も縮む?

寒くなると身体のあちこちが夏に比べて硬くなります。中でもアキレス腱の縮んでくる人が多いように感じます。しゃがめない人も多い。なぜアキレス腱は縮みやすいのでしょうか。(アキレス腱をむかし何と呼んでいたのかは分かりません。かかとあるいはきびすと呼んでいたのでしょうか。)

考えてみると、アキレス腱が縮むといっても骨の長さは変わらないはずですから、アキレス腱だけが縮むのは妙な話です。じゃあ骨の長さも短くなっているのだろうか。これはもっともな疑問です。

なっているんです。──えーっ、なんだって? そんなばかな。

もちろん下腿の中心にある脛骨(けいこつ=すねぼね)の長さは変わりません。ところが外側についている腓骨(ひこつ=ふくらぼね)が下って外へ開くと、脛骨がすこし斜めになります。すこしと言っても目に見えるほどではないかも知れませんが、斜めになった分だけ脛骨の上下長さは縮むはずです。つまりわずかにO脚になる。

fuyuzakura
フユザクラ

足をパーにして伸ばす

下腿の裏側(ふくらはぎ)の表面には腓腹(ひふく)筋、奥にはヒラメ筋という二つの筋肉があります。腓腹筋は上の方が二本に分かれていて、一本は膝裏の内側に、一本は膝裏の外側に付着しています。アキレス腱が縮むと、腓腹筋のうち膝の内側に付いている部分の腱も縮みます。やや斜めになるわけですから、外側に付いている部分は、むしろ引き伸ばされるはずで、内側に付いている部分が縮みます。(この意味が飲み込みにくい方は、「腓腹筋」で画像検索して、納得してください)

すると、膝裏(ひざうら。ひかがみとも言う)の真後ろ、やや下に圧痛が出ます。あなたの膝裏の内側寄りに圧痛があるとすれば、アキレス腱と腓腹筋の腱の両方が縮んでいる証拠です。整体の施術者は、この圧痛を調べて、腓骨が下がっているかどうかを調べることができます。

これで腓骨がやや下がるとアキレス腱が緊張する理由がわかりました。ではどうすればアキレス腱が縮んでいるのを伸ばせるでしょうか。実は簡単です。次のようにします。この方法が分かれば、腓骨を上げることも要らないし、腓骨・脛骨の開きも自動的に調整できますし、いいことづくめですよ。脚がぐっと軽くなるはずです。

仰向けに寝て、アキレス腱が縮んでいる側の足の指を「パー」の形にします。つまり指先をできるだけ開きます。両足ともアキレス腱が縮んでいると思う人は両足同時にやることもできます。そうして、「パー」のまま指先を手前に引きます。逆にいうと、かかとを突き出す形になります。これをしばらく続けます。時間にして20~30秒くらいでしょうか。

さて元に戻して今度は確認。普通にもう一度、アキレス腱を伸ばして見ます。どうですか。伸ばすのが楽になったでしょう。初めふくらはぎに感じていた痛みもなくなっています。もしもまだ痛みが残っているようなら、ふたたび同じことをすればなくなるはずです。O脚もわずかに改善します。

kaede
カエデ

筋肉痛が起きない

長距離を歩いた時など、このようにしておけば、2日後に筋肉痛で困ることがなくなります。先日わたしはカミサンと二人連れで、東海道は水口の宿場(滋賀県南部)あたりを20キロほど歩きました。帰ってからアキレス腱を伸ばしておいたら、まったく痛くなることがありませんでした。驚きました。

もちろんこれでダメな人もいるはずです。下腿がカチカチになってしまっている人はダメかもしれませんし、どこか痛くなる人がいるかもしれません。その場合は何か他に問題があるので、整体屋さんの門を叩いてみてください。

ちなみにこの方法は、大正時代(1912~1926)の文献『正體術矯正法』に載っているものです。著者・高橋迪雄 氏の父、高橋金作氏(いずれも生没年不詳)が考案したのではないかと思われます。明治時代(1868~1912)のことでしょう。方法が簡単に説明してあるだけで、なぜこんな効果が出るのか説明はありませんが、含まれている内容は素晴らしい。

後日談を付け加えておきます。オランダ在住の女性から次のように「足パー操法」の効果についてメールをいただきました。かほどの効果があるとは思いもしなかったことだけに、ぜひ紹介をさせてほしい、きっと皆さんのお役に立ちますからとお願いし、許していただいたので、一部を転載します。

8月に両ひざを痛め、ひどい時は、ひざを曲げられなくて引きずるようにして歩いていました。見るからに腫れて、熱も持っていました。私の仕事は半分肉体労働なので(産後の訪問看護とハウスキーピング)、ひざをつく動作なども多く、歯を食いしばるようにして仕事していた時期もありました。痛みをかばうようにして生活していたためか、姿勢や動作に偏りが生じ、こし・ひざ・あしくびの関節が、少しずつおかしくなっているように思います。

ところが、先回紹介されていた、足底を突き出して足指も開いて力を入れてキープ、という体操(?)、ドラマティックに効いてます。1回で、日常動作による痛みはすっかり消えました。次の日には、ひざ裏の厚ぼったい違和感が消えていました。

ヨガのポーズでできないものがいくつかあったのですが(正座、足を組んだり、木のポーズなど、ひざに負担のかかるもの)、それも徐々に回復しつつあります。初めて1週間ほどでこんなに変わるなんて、びっくりしてます。自分の体にあやまって、感謝してます。・・(途中割愛)・・今回の体操は、よくなってゆく一方です。毎朝のヨガの準備体操に、1回やるだけなのですが・・。

膝の悪い人は下腿が開いています。効果があって当然だと思いますが、それにしても凄すぎる。また腰の悪い人は左右の足首の状態が違います。初期の悪くなりかけた人は一方が開いていることが多い。膝の悪い方、腰の悪い方など、ぜひともこの操法をお試しください。精を出して歩いたりすることも忘れないように願います。

( 2012. 11 初出、2013. 06 加筆 )