母趾操法

「母趾」は足の親指です。手の親指は「拇指」と書きます。足の「母趾」を操作すると、色々な効果が生まれます。簡単ですよ。

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赤い靴の・・・(横浜港)

走ると下腿が開く

やっと4日連続の上級講座が終わりました。喋りづめの私もきついですが、参加者の方々は朱鯨亭の2階に缶詰になっているのがきつかったことでしょう。本当にお疲れ様でした。でも奈良には行きたいところがいっぱいありすぎでしょう。「紀伊神社」や「知足院」など、ガイドブックにあまり書かれない隠れスポットに行かれた方々がいらっしゃって、楽しんでいただけたのではないかと思います。「田川」の超大盛り仰天カレーや、「菜一輪」に茂っている「旧・奈良奉行所」(現在は奈良女子大になっている)の松の木と真空管アンプも話の種を提供したかもしれません。

さて、講座の底に私が意図して流していた通奏低音あるいはオスティナート(反復パターン)は「下腿と前腕の開きをどうするか」というテーマでした。例えば、10キロとか20キロとかを続けて歩くと、どうしても下腿、つまり腓(ふくらはぎ)の二本の骨が開いてきます。これを防止するために「脚絆」(きゃはん)とか「ゲートル」という道具が存在しています。この開きについて少し説明したいと思います。

例えば。昨日、上級講座を終えた私は気分を一新するため、新年から妻と少しずつ続けている「西国街道」歩きを再開しました。西国街道は京都の羅生門あたりから始まります。ここから西宮の門戸厄神までは、すでに歩いていたので、きのう私が歩いたのは門戸厄神から神戸市の三宮まで曲がりくねった約20キロあまり。舗装道と地道との差があるので、単純には言えませんが、江戸時代の大名行列は、一日に平均10里(37.5キロ)は歩いたと言われますから、20キロなどものの数に入らないかもしれません。でも、さすがにこれだけ歩くと足裏が痛くなりました。少し膝のウラが重く感じます。

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関帝廟 (横浜中華街)

下腿が開くと骨盤に影響

つまり、これは下腿の二本の骨が開いてきたという証です。もちろん筋肉の疲労もありますが、それより<開き>の方が大きいと感じられます。なぜか。膝のウラ、それも外側より内側に痛みを感じるのは下腿の外側にある腓骨が開いて少し下がって来たことを意味します。筋肉の疲労と言われているのも、多くは腓骨の開き、または下がりによって痛みが出ているものであろうと思います。

いつも書いていることですが、下腿にある脛骨と腓骨という二本の骨は力がかかり続けると開きやすい。人の身体は、たいていが左右どちらかに重心を寄せていますから、重心が寄った側の下腿の骨がひらいて来ます。すると、腓骨が少し下がって膝がやや詰まり、下がった側の骨盤が傾いてくる。左脚が開くと骨盤が左に傾きやすい。これは椅子に坐った時に重心がどんな位置に来ているかを注意すると感じられるかもしれません。

そしてこの事実は、決して長距離を歩いた時のことだけでなく、つねから腰が痛いとか、膝が痛いとか嘆いている人が抱えている事情でもあります。このような人の膝や腰をみると、たいていが下腿の開きを抱えていますから。言い換えると、腰や膝が悪い人は、常日頃から下腿が開かないように注意をしているのがよい、ということです。ではどうすればいいか。これについて前に書いたと思いますが、ふたたび書いておきます。母趾操法をすればいい。

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氷川丸 (横浜港)

脚絆が必要だ

では母趾操法とは何か。まず下腿の真ん中あたりを誰かにぐっと握りしめてもらう。すると硬くてやや痛み(あるいは、いた気持ちいいかもしれません)を感じる方と、何も感じない方とがあるはずです。何かを感じる方、つまり痛かったり気持ちよかったりした硬い方の脚が開いています。そこで、開いている方の足元に誰かに坐ってもらって、母趾(足の親指)の指先をぐっと押してもらう。こちらはそれに対抗して、ぐうっと押し返す。しばらく押し合いをした後で、ぱっと指を離してもらうと、足はどっと術者の方へ伸びます。この時の勢いで下腿の二本の骨が、ぐっと締まります。左右の脚をぐっと握りしめてみて、太さを比べてもらいながら2~3度する。これでおしまい。二本の骨がかなり締まったはずです。

中に親指に力が入りにくい人もいます。こんな時には、始め弱めの力で始め次第に強くしてもらうようにすれば、かなり対応できるだろうと思います。少し力が入るようになれば、術者の方も力を入れるわけです。これだけで常習の腰痛が軽減される場合もあるでしょう。ただし坐骨神経痛の人は、いきなりこの操法をすると悪化する場合もありますから要注意です。心配な人は少しずつ弱めから試してください。そうでない人は心配無用です。腰痛の人、膝痛の人だけでなく、肩こりなど何か常習的な症状をもっている人も、この操法が功を奏するケースがあるはずです。

なお、母趾操法についてはこちらにも詳しい記事があります。

( 2012. 05 初出 )