複雑な捻挫

足首だけでなく、ほかにも色々と影響を与える複雑な捻挫があります。

gilia
ギリア

足の骨がズレる

捻挫が二人つづきました。どちらも複雑な捻挫を起こしている例でした。そういうと「複雑な捻挫」と「単純な捻挫」とがあるのかと尋ねられるかもしれません。そうです。確かに違いがあります。ただし、この話は足首の捻挫の話ですので念のため。

どちらもテニスの試合中に起こした捻挫でした。一人は10代の少年でした。こちらは比較すれば単純な捻挫に近い例です。無事に試合に復帰することができて良かったとお母さんから連絡がありました。もう一人は40代の男性。これはかなり複雑な性格の捻挫です。

複雑なほう、つまり40代の男性を取り上げます。Nさんとしておきましょう。彼はかなりのテニス好きらしい。ジャンプしてボールを打ち返したものの、着地に失敗して足首をひねってしまった。上から重い身体が落ちて来るわけで強い衝撃があります。

道を歩いていて捻挫する場合だとそれほどの衝撃がかかるわけではないので、比較すれば軽く済むことが多い。つまり単純な捻挫に終わるわけです。この場合は足の「立方骨」(りっぽうこつ)が飛びだし、逆に「舟状骨」(しゅうじょうこつ)が凹むだけで済むかもしれません。

立方骨と舟状骨の説明は言葉では難しいので、ネットで何かの図を探してください。簡単にいえば立方骨は、小指側の側面を指先から手前へずっとなぞって行くと、いったん少し飛び出していて、その後で凹みがちになっている場所がありますね。その凹みがちのところを少し内に上がったあたりにある骨です。

舟状骨は親指側の側面を指先から手前へなぞって行くと、内踝の斜め前辺にやや飛び出した感じの骨がありますが、その飛び出しから横へ外側へ辿ったところにある骨です。でもこんな説明では分かりにくいでしょう。ネットの図で探してみてください。

silene
シレネ

内くるぶしに痛みが

さて右足を包帯でグルグル巻きにしたNさんが、包帯を外して見せてくれた足を見ると、立方骨と舟状骨の関係がおかしくなっていました。左足を見ると甲が盛り上がっているのに、捻挫を起こした右足は甲が平らになっています。立方骨のところは逆に飛び出して硬くなっている。二骨の関係を正常化する必要があります。交差法という共鳴を使ってこれは簡単に解決しました。

ただ、やり方が分からないといわれるのが辛い。単純化すると捻挫を起こした足と同じ側の手の小指の第一関節の外側から指先方向に、10秒程度の間隔をあけて、何度も撫でるわけです。そして同じ小指の内側を指先から手前に何度も撫でます。ちょうど反対方向へ撫でるので、交差法と呼んでいます。

さて次に足首のすぐ下にある距骨(きょこつ)という骨を正常化させたいと考えたのですが、このあたりが内も外も腫れ上がって触ると痛いと言われる。特に内くるぶしの頂点を触ると激痛が起きるらしい。Nさんの顔が痛みに歪みます。これでは触れません。

なぜ内くるぶしに痛みがあるのかと観察してみると、下腿にある脛骨(すねぼね)と腓骨(ふくらぼね)とが開いてしまっている。左足と比べるとかなり太くなっています。太くなって全体に腫れ上がっているわけですから厄介です。普通は二本の骨が開いていれば母趾操法をすると閉じてきます。拇指操法とは、足の母趾を足元からグッと押さえて抵抗を与え、それに逆らって向こう側へ足が伸びたところでパッと離す操作のことです。これについては以前に何度も書きました。

ところがあちこち痛みがあるので母趾操法をすることができません。そこで二本の骨をグッと握っておいて、足首から少し上で骨の間をグッと押さえ、パッと離す操作をしました。これも普通なら足首のところでする操作ですが、そこには強い痛みがあってできません。それで考えて、もう少し上ですればできるかとやってみたわけです。これでうまく行きました。次第に二本の骨の間隔が縮まってきました。

murasaki
ムラサキ

母趾操法

少し痛みが軽減してきます。そこで今度は内踝の下と外踝の下に親指と示指を当てて愉気をします。これで距骨がかなり正常化するはずです。とはいえまだ痛みがあるので、本当のところがどうなっているかは確認できません。すべては仮説というか推測で進めるしかありません。だんだん文が長くなってきました。もう少しです。

距骨が正常化すると痛みが全体に軽くなってきました。これなら母趾操法をすることができるかもしれません。実際に試してみると、さほどの痛みではないらしいので数回やってみました。脛骨・腓骨の間隔が締まって、痛みの具合が軽くなったので、ほぼ終わりです。

テニスでジャンプして降りた時に捻ったのですから、その時に右側に重心があって右足を傷めたに違いありません。ですから重心を少し左側に移動しておくことが必要です。これは軽く打ち込み法を使いました。うーん。やはり今回のは施術家むけの文章になってしまいましたね。打ち込み法の説明など文章にするのが難しくて書けませんから。あえて書いておけば、伏臥で左脚を折り曲げ、それを持ち上げてトンと落とし、しばらく寝かせておいたことになります。

これで立ち上がってもらうと、痛みがかなり軽くなったそうです。青じみや腫れがまだ残っています。これは日にち薬で直って行くでしょう。このあとすぐに仕事にかかるんだそうです。Nさん、早く回復できますように。(後で聞いたところによると、すぐに立ち仕事をずっと続けたために、またパンパンに腫れ上がってしまったそうです。うーん、残念無念)

( 2013. 05 初出 )