靴の履き方・選び方

健康にすごく関心のある人たちは、靴にも関心を持ってもらいたいものです。でも・・・

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綾部市の農家

ひどい靴の履き方

目を覆うひどさですね。特に女性の靴を意識して観察していますが、街を歩いている若い女性の靴がよくない。靴が悪いだけでなくて履き方がひどい。信じられないほどです。

細い紐(ひも)を巻きつけたようなサンダル風の靴を履いている女性が駅の階段を昇っていました。踵のところには紐があって、しっかりしているように見えます。ところが、その姿を後ろから見ると、何だか靴がぐらぐらしている様子なので、おかしな靴だな、どうなっているのかな、と近づいてみると、後ろの紐をボタンか何かで留めるようになっているのに、留めないで外しているんですよ。紐を留めると、擦れて痛いからなんでしょう。

でもあれでは、足首がぐらぐらするままで歩いているわけでしょう。足首がぐらぐらの人をときどき見かけますが、やがてあんな風になるんじゃないだろうか。しかもヒールが高いから、何というか目も当てられない不安定さ。歩くたびに足首が右に左にぐらぐら揺れています。よくあんなので歩いていられるな、と感心するほどです。こんな女性がすぐ近くに二人も歩いていましたので、ああ、もういやだ、と観察するのを止めたほどです。

この例だけではありません。スリッパ式のものをズリズリつっかけながら歩いている人。踵のところを踏んづけてしっかりした靴をわざわざ潰して歩いている人・・・。しっかりしたウォーキング用の靴を履いている人もいますが、それは少数派。足だけ見ていると、何だか面倒くさそうに靴を曳きずって歩いている感じの人が多いようです。

踵がしっかりしている靴がよろしい、と私が書いた意味は、しっかりした靴なら、底が道路や床にしっかり着地して、からだ全体をうまく支えられるからです。踵の不安定な靴だと、足底がしっかりと大地をとらえることができません。あんなサンダル風の靴底は、いったいどんな減り方をしているのか興味があります。ひょっとすると底が丸く減っているのではなかろうか。機会があれば、お客様の靴を観察させてもらおうかと思います。

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ユリ

靴の社会面

ただし、ここまでの話しは靴の機能面(健康面)ですね。ちょうどお盆で実家に帰ってきていた娘にこれを読んでもらったところ、「女性には夢があるんよ。お父さん」と言われてしまいました。確かに靴には服装と同じく、機能だけでなく、社会面というか象徴面というか、女性としてのアピールであるとか、社会的地位のアピール、個性のアピールといった側面が強くあって、それらを無視することができません。機能面だけで靴の選択について語ると、社会面が落ちていると感じられてしまうわけです。

要するにお店にオシャレな靴しか売っていない、というところに問題がある。靴の社会的な面だけをアピールする靴は売っているけれど、健康面を無視しているところに問題がある。オシャレな靴ほど不安定で健康面を無視した形をしています。擦れたりして痛いものだから、紐を外して歩く癖がついてしまう、ということになっています。

つまり社会面を重視した靴は、健康面を無視しているという状態になっているんですね。でも、これでは、オシャレも何もあったものではありません。不安定なまま無理やりに歩いているものだから、素足になってみると、指が目もあてられないひどさ。指が反り上がった「反り指」やら、いったん反り上がった指先が何とか靴底をとらえようと涙ぐましい努力をしているために、草刈り鎌の先のようになっている「鎌指」(ハンマートウ)やら、すさまじいことになっています。そんな足のどこが魅力的なものか。オシャレどころではありません。もう、見かけ倒しばかりが氾濫しているわけです。

echinacea
エキナセア

TPOに応じて

なぜこれほど足に悪い靴ばかりが氾濫するようになってしまったのでしょう。比較のために「ゲブリューダー・ゲッツ」というドイツの靴屋さんのHPを見ました。ここで「女性用靴」Damenschuheと書いてある項目をクリックして見ると、実に色々な項目が載せられています。左側にならんでいる項目のどれかをクリックしてみます。オシャレな靴もあれば健康志向の靴もある、という具合で、場合に応じて履きかえていることが分かります。毎日、オシャレな靴ばかりでは、足がくたくたに疲れてしまいますから、TPOによって履きかえることが大切であることを示しています。

日本の若い女性たちは、TPOに関係なく、同じような靴をいつも履いているのではないだろうか。それがひどい指を作り出しているのではないだろうか。そう思います。平凡な結論ですが、オシャレな靴ならどんな靴でもいいのではなくて、毎日の足の生活を考えて靴を選ぶようにすることでしょう。時により場所により、たまにオシャレな靴もいいですが、普段はしっかりした紐靴を選ぶようにしたいものです。

そうすれば将来、足首が痛い、腰が痛い、膝が痛いと嘆いて整体処を尋ねる必要もなくなるでしょう。もう少し自分の足の健康も考えるようにしましょう、というのが結論です。足の健康に注意すれば、あちこちの関節を傷めることも少なくなるはずです。足に悪い靴は、からだ全体にも悪い。これは、単なる思い付きで言っていることではなく、いつも人の足を観察している人間の確信していることです。

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農家の囲炉裏

歩き方

ついでに歩き方について──よく、足のことを書いた本などを読んでいると、両方の足先をまっすぐ平行にして歩くのがよい、と書いてあります。理屈は分かります。しかし、実際にやってみると、それはかなりしんどい。短時間ならいざ知らず、長時間それを続けると、足の筋肉のどこかが痛くなってくることでしょう。

そこで、別の方法を考えてみましょう。いつか読者からご指摘をいただいたことですが、胸骨を挙げてみることです。胸の真ん中に縦にある胸骨。これをちょっとでいいから持ち上げる気持ちで歩いてみます。いわゆる「胸を張って歩く」というのとは違います。あくまで胸骨を少し持ち上げるという意識で歩いてみる。すると、両脚がひき締まって、無理に平行にしようとしなくても、自然に平行になります。お試しください。もう一つ別の方法もありますが、それについては、またいつか。

( 2010. 09 初出 )