身体の中心軸

身体には中心軸の感覚があり、背骨のありかとは少し違っているようです。これが変化するとどうなるか、という例です。

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インドボダイジュ(印度菩提樹)
釈迦がこの下で悟りを開いた

左右の非対称が生むもの

昨日来られた若い女性はアトピーがきつくて困っていらっしゃいました。必ずといってよいほど、皮膚の問題を抱えている人は骨盤に大きな問題があります。しかしこの女性の場合はちょっと見たところ、さほど骨盤に大きな問題がありそうには見えませんでした。

ところが足首が不安定だとおっしゃる。よく調べて見ると、足首の付け根にある「距骨」(きょこつ)という骨が少しズレていることが分かりました。何かしっかり立てず、左足に力が入らない感じだという。そこで踝(かかと)の周辺を操体法のように反動を使って整えると、グラグラが消えました。

仙骨のゆがみ

そこで正坐してもらうと、どうも何だか変だ。傾いていなくても、正坐して左右対称にならない人は、どこかに問題があります。はっきりどこがおかしいと指摘できなくても、全体に「何だかおかしい」と感じたら、そう感じる自分の感覚を信じることです。足・仙骨・背骨、そういったところに何か問題が潜んでいるに違いありません。うつ伏せになってもらって仙骨を調べると、仙骨が歪んでいます。手の甲の共鳴を使ってこれを修正すると、おかしい感じが少なくなりました。

「仙骨」といっても、どこにあるのかよく知らないという人が多いので、付け加えておきましょう。大まかにいうと、骨盤は「仙骨」と呼ぶ中央の逆三角の骨と、両側にある「寛骨」という大きな骨でできています。他に仙骨の下に尾骨という小さな骨があります。

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サラ(沙羅)
釈迦入滅の時、両側に
沙羅が生えていたので
「沙羅双樹」という

中心軸が変わると

さて、仙骨の位置を修正した後、背骨にある少しのゆがみを修正して立ってもらいました。すると「あれっ」と言われる。今までと中心軸が変わったんだそうです。それまでこれが中心と自分の感覚で思っていたのが、違っていたことが分かった。まっすぐだと思っていたのが傾いているので、あれ、おかしい、と感じるわけでしょう。逆にこれまで傾いていると感じていたものが、まっすぐになったりする。何だかとても奇妙な感覚になるわけです。

そうではないと分かっていながら、「朱鯨亭の建物は古くて、わずかながら傾いていますから、そのせいではないですか」、と言ってみる。わずかながら柱が傾いていて、細い材木で修正してあるところがあります。それを見ると確かに傾いているなあ、というのが分かります。でも、家の傾きとは無関係の線を見てもらっても、やはり変な感じです、とおっしゃいます。部屋の中をあちこち歩き回って、変わった変わったと連発です。不思議な感覚なんだそうです。

叱られるかもしれないですが、こういう歪み方もあるんだと、こちらとしてはとても興味深い体験です。この方の身体を大きく変化させるほどの触り方をしたわけではないのに、どうしてこれだけ変化するのか。おそらく仙骨の歪みが原因でしょう。

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スイレン(睡蓮)

わずかな違いで

仙骨は骨盤の真ん中にあって、背骨の土台になる骨です。例えてみると、立ててある竿の根元を少し傾けるだけで竿は大きく傾いてしまうでしょう。それと同じです。この骨のゆがみをわずかに直しただけで、背骨の傾きが修正された。そのためにこれまで傾いている感覚だったものがまっすぐである感覚に変わったわけでしょう。足首がわずかに変化したのも関係しているかもしれません。

こういう変化は、整体の後でよく起きているはずですけれど、それをこの方のように的確に表現してくれる人があまりいないように思います。こう言っちゃ悪いけれど、どうも身体感覚が鈍くなっているんではないかと思える人が少なくありません。だけど、この女性の場合は、それを的確に感じ取っている。

整体を受けに朱鯨亭に来られたら、その後ご自分の身体にどんな変化が生じたか、よく感じるようにしてくださったら色々と面白いのではないでしょうか。ご自分の中心軸がどこにあるかを感じてみる。朱鯨亭の柱が少し傾いていることにもご注意ください。

( 2008. 05 初出 )