こちこち地獄

K電鉄のYさんは50歳の男性です。何やらいつも疲れた感じがあって、あちこち軽い痛みもある。しかも気分がなんとなく晴れない。職場のストレスがあるにはあるが、それだけが原因とも思えない。どうしてこうなっているのか自分にもよくわからないし、病院に行ってもはっきりした診断がない。何を頼りに生きて行けばいいのか迷いが出てきました。

からだ中が鬱陶(うっとう)しい

rakan
北条の五百羅漢(兵庫県加西市)
はウツ人間の身代わりか

Yさんは男性ですが、女性でも同じです。なんだか調子が悪くて、うつうつとしている。といって、急に悪くなるわけでもない。すっきりしたいという思いはいつも持っている。でも、どこへ行けばすっきりできるのか当てがありません。鍼やマッサージを受けたり、ジムでからだを動かしてみたりするけれど、どうもすっきりしないで一人で悩んでいる。「それって、俺(私)のことじゃあないのか」と思いあたる人が数多くいたりします。

すぐに命がどうなるわけでもないし、激しい痛みがあって困るわけでもありません。ですから、こういう方が正面から取り上げられることは少ないけれど、実はたくさん隠れているようですね。「不定愁訴」とか、「自律神経失調」、「慢性疲労」、「更年期障害」などの言葉で片付けられているかもしれません。整体を受けに来る人は氷山の一角だとすれば、こんな悩みを持った人が実はずいぶん多いのではなかろうか ―― そう思います。

rakan
もっと緩めてほしい

何がどうなっているのか

病院へ行けば、血液検査を受けたりするんでしょうね。たとえ血液を採られても、「どこも悪くありません。特に気にするほどの数値が出ている項目はありませんね。中性脂肪が少し高いかなあ」などと言われ、それでおしまいです。

どこも悪くないと言われても、現実にからだが常にすっきりしない、どうしたらいいんだ、と本人は思っています。病院の診断と本人の感覚とどちらが正しいのか。もちろん本人の感覚です。本人が「しんどい」と思っているのだから疑う余地がありません。

ではYさんのような人の何がどうなっているのでしょうか。整体の立場から、こういう現象をどうとらえたらいいのでしょうか。

こちこち地獄

全身にだるさをかかえた人に共通すること。それはからだが硬いことです。特に脚が硬い。それから肩の周辺が硬い。股関節が硬い。どこもかしこもではなくても、あちこちに硬いところが潜んでいます。このからだの硬さが悪さをしているのではないだろうか。

からだが「硬い」とは、どうなっていることなのかを考えてみましょう。例えば太ももの外側。そこが硬くスジ張っていませんか。押してみると、硬いスジがずっと下から上まで続いています。それだけではありません。膝を押えてみると、これがコチコチに硬い。まるで機械の部品を触っているように硬い。鉄が入っているのではなかろうか、と思えるくらいです。だれでもこんなに硬いのだろうかと疑問に思って、彼女の太ももをひそかに触らせてもらうと、これが意外に硬かったりします。これじゃあ、どうしようもないや。

コチコチ現象の根っこにあるのは何か。どうやら脛(すね)に秘密があるようです。身体がコチコチになっている人の脛はたいてい硬くなっています。脛のところには脛(けい)骨と腓(ひ)骨という二本の骨があって、この二本の骨がねじれていることが多い。そして腓骨が下がっています。脛が内側に弯曲しているかもしれません。この状態で体重を支えるためには、どうしても筋肉が硬くならざるをえないでしょう。これがコチコチの原因の一つではないだろうか。

rose
京都府立植物園で

整体で歪みをとると・・・

さて、Yさんの症状はどうなったでしょうか。施術で少しずつゆがみを取り除いて行きました。その結果、Yさんの口から「初めて来た時よりは、かなりよくなってます」という言葉が出るようになりました。この段階になるまで5回ほど来られたと思います。

Yさんのからだの硬さがすこしずつほぐれて来たということですね。つまりからだが硬いというのは、からだに何かゆがみがあって、そのため筋肉などにひずみが発生し、緊張状態を作っていることを指しているわけです。関節のゆがみをとると筋肉の緊張が消えるのが何よりの証拠。筋肉の緊張をとってゆがみをなおすマッサージという方法もありますが、これは効率が悪い。大変に手間がかかって、その割には成果がイマイチです。しかも、マッサージを受けてしばらくすると、かえって余計に硬くなっていることが珍しくありません。いつもマッサージ機にかかっている人の肩は、触るのが怖いほどです。

rose
これを見ればゼッタイ緩む

からだのゆがみが消えて、痛みや鬱陶しさがなくなるにつれて、今度は心のモヤモヤも次第に晴れていくようです。朱鯨亭に来られるまで、Yさんは疲れたからだをひきずって職場からまっすぐに帰宅していたそうですが、最近はちょっと一杯ひっかけて帰る余裕が出てきたとおっしゃっています。以前よりラクになっているのではないでしょうか。パニック症などの人も同じです。

整体にパニック症やウツの治し方、などというものはありません。そうではなくて、からだのゆがみがとれ、全身がゆるむにつれて、精神の緊張もゆるんでくるというのが道筋です。その理由ははっきりとは分かりません。ただ、いえそうなことは、からだがゆるむにつれて、頸がゆるみ脳に行く血流が改善することです。ウツは脳の血流が不足した状態ではないだろうか、と感じます。

Yさん。京都の府立植物園でバラの写真を撮ってきましたから、どうぞお楽しみください。